2023年9月7日、ジャニーズ事務所が会見を行い、ジャニー喜多川氏が性加害を行っていたことを認め、謝罪をした。また、新社長に就任した少年隊の東山紀之さんが年内をもって表舞台からは退くことと現段階でジャニーズという名前は存続するつもりであることも発表された。
その後、ジャニーズ事務所のタレントを起用している企業が次々と契約の更新を行わないことを明らかにした。すると、ジャニーズ事務所は今後1年間は広告や番組で発生した出演料は所属タレントに全額支払う、つまり事務所として報酬は受け取らないと表明した。
これを受けて、所属タレント、テレビ局はどう反応するのだろう。私はジャニーズの誰かの熱烈なファンでもないし、ジャニーズのタレントをCMに起用している企業にも勤めていない、ただのお茶の間のテレビ好き。そのニュートラルな立場ゆえ、なんだかいろいろと考えてしまう。
私が今この件について感じていることを残しておこうと思う。一週間後、一ヶ月後、一年後、五年後、十年後にこれを読み返したときにどんなふうに感じるのかも興味がある。
新社長の東山さんが少年隊のメンバーでキラキラしていた時代を知っている。少年隊は、錦織一清さん(ニッキ)、植草克秀さん(かっちゃん)、東山紀之さん(ヒガシ)の3人で構成され、他のグループに比べ歌とダンスのクオリティーが圧倒的に高かった。たぶん私みたいにテレビばかり見ていたアラフィフは少年隊の全盛期の曲はほぼ歌えるのではないだろうか。次々に世界観の異なる曲をリリースして楽しませてくれた。ちなみに私が少年隊で一番好きなのは「まいったネ 今夜」という曲である。
だから、50代になった今でもレギュラー番組を持ち、MCや俳優としてテレビに出演し続けているヒガシが、表舞台から退き、社長として事務所の立て直しをする、ということに私はびっくりした。事務所を存続させるには、ヒガシが社長になる以外の道がなかったのだと感じた。
でも、ヒガシが社長に就任し、事務所として性加害を謝罪したところで、その過去は消えることはない。事務所が名前を変えずに存続することに、多くの企業がCM契約を更新しないというNOを突き付けた。そのタレントが性加害に関与しているかは全く関係ない。ジャニーズ事務所のタレントをCMで起用し続けることは、性加害は問題がないとその企業が言っているようなものなので、当然の流れだと思う。
それならばと、ジャニーズ事務所は報酬を1年間は受け取らずにタレントに全額支払うという案を出してきた。1年間収入がゼロでも倒産せず、性被害を受けた方々への補償金もまかなえると見込んでの提案なのだろう。でも、企業目線で考えてみると、支払う額は同じでタレントの取り分が100%になるだけなので、あんまりメリットはない気がする。よくぞ契約をしてくれたと熱烈なファンがその企業の商品をたくさん買ってくれるので、短期的に収益を得たい企業には有効なのかもしれないけど。この提案は、どちらかというと、対企業ではなく、所属タレントの流出を防ぐのが目的なのかなと思っている。
私が今嫌なのは、テレビにジャニーズタレントが出ていると「あ！」と反応してしまうこと。例えば今日、洗濯洗剤のＣＭで菊池風磨さんを、ニュース番組で新曲をリリースするなにわ男子を見たら、心がざわざわした。このＣＭはいつまで続くのかなとか、彼らは所属事務所で性加害があったことやジャニー喜多川氏についてどう思っているのかなとか。あの会見以降、ジャニーズのタレントを見るたびにそんなことを考えてしまう。そしてきっと、ジャニーズタレントが降板したＣＭを他の誰かがやっているのを見ても「ふ～ん」と思うのだろう。テレビ番組をふつうに楽しみたいが、しばらくはそれは出来なさそう。
ドラマ、バラエティ、クイズ、報道・・・。テレビ番組はジャニーズのタレントが出演している番組ばかりである。テレビ局はどうするつもりだろうか。1年間事務所への報酬なしという立派な看板(言い訳)が出来たので、テレビ局は何事もなかったようにジャニーズのタレントを出演させるのかもしれない。「ジャーナリズムはどこに行った？」と思うが、この国のテレビ局にジャーナリズムなんてもともとなかったんだった。
番組スポンサーを降りる企業が増えたり、ジャニーズ事務所を辞めるタレントが増えたりすれば、また状況は変わってくるのかな。私にもジャニーズのタレントが出ている好きな番組は複数あるが、今の率直な気持ちとしては「終わらせないで！」より「ここで全部膿を出しちゃおう！」のほうが強い。
今私が一番好きなテレビCMはソフトバンク。中居正広さんが軽やかに楽しそうにダンスをするCMである。SMAP解散騒動のときはどうなってしまうのかと思ったが、その後中居くんはジャニーズ事務所から独立し、2023年にソフトバンクのCMに戻ってきた。今このCMがオンエアされたのは、偶然ではなく、なにか意味があるのだと思っている。
