edamameのテレビブログ

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アグネス論争を思い出す2022年


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 2022年6月3日に放送された「クイズ!あなたは小学5年生より賢いの?」は2時間SP。今回はニュースキャスターやレポーターといった報道に関わる人たちがクイズにチャレンジしていた。そのなかに混ざって教育ママとして登場したアグネスチャンさん。惜しくも300万円ゲットならず、だったが、一番の見せ場を作っていた。

 そしてその夜、「報道ステーション」を見ていたら日大の次期理事長に林真理子さんが就任するというニュースをやっていた。

 アグネスチャンさんと林真理子さん。そういえば、私が子供の頃、アグネスチャンさんが子供を職場に連れて行ったことで論争があったなあとふと思い出した。

 調べてみると、いわゆる「アグネス論争」が起こったのは1987(昭和62)年。1987年は今から35年前。男女雇用機会均等法が制定されたのが1985年なので、それから2年後に出た問題である。

 今でこそ育児や病気、親の介護といった超プライベートなことをオープンにしている芸能人も多くいるが、当時はそんな感じではなかった。芸能人は人々に夢を与える職業だった。また、スタジオに行かないと仕事が何も出来ない時代でもあった。

 1980年代。山口百恵さんが三浦友和さんと結婚し、芸能界を寿退職したのは1980年で、松田聖子さんが芸能界を引退せずに神田正輝さんと結婚したのは1985年。日本人女性にとっては、生き方を自由に選べるようで選べないような、選んでいるようで選んでいないような、そんな時代だったのかもしれない。

 当時私は中学生だった。アグネス論争について、ふつうのオフィスに赤ちゃんを連れて行って仕事をするのは難しいけれど、芸能人だったら楽屋があるし、マネージャーが赤ちゃんの面倒を見られるから出来るんだろうなあと思っていた。だから、この問題は自分とは全然関係のない世界の話だととらえていた。そして、赤ちゃんを職場に連れて行くことに眉をひそめる人たちがいるのも当然だと思っていた。

 でも、なぜ我々と住む世界の違うひとりの芸能人の行動がこんなに大きな社会問題になったのだろう。アグネスチャンさんが赤ちゃんを連れて職場に行っても、赤ちゃんはテレビには出ないので、テレビを見ている人たちは全く関係がない。影響があるのはその職場にいる人たちだけのはず。

 これは私の憶測でしかないけれど、その当時、多くの日本に住む女性たちは選択肢があるとはいえ、本当に自分の選んだ人生を生きていなかったのかもしれない。あるいは、自分の生き方に確固たる自信を持てていなかったのかもしれない。そんなときに起こったのがアグネス論争なのではないだろうか。

 子連れで働く彼女が非難されているのなら、私は家庭に入って正しかったんだ、と自分を肯定できた人もいたかもしれない。その一方、男性と肩を並べて働きたいワーママは、ただでさえ肩身の狭い状況なのにさらに水を差すような論争にうんざりしていたかもしれない。

 あれから35年。果たして女性の生き方はハッピーになっただろうか。当時と比べて、結婚しても出産しても働く女性は増えたと思う。アグネス論争の頃は日本はいわゆるバブルで、夫の一馬力でも十分暮らしていける時代だった。だから、このときに働き続けることを選んだ女性は、自己実現のために働きたいという人が多かったのではないだろうか。私が社会人になった1990年代でも寿退職は主流で、結婚しても働き続ける女性って周囲にはまだあまりいなかった。

 そして月日は流れ、いつの間にか、子供の教育にお金がかかるようになり、サラリーマンの終身雇用が不確実のものとなり、「ドラえもん」ののび太のママのようにテレビを見ながらおせんべいを食べている専業主婦は少数派になってしまった。自分が輝きたいから働く、というより、生活のために働く、という時代になっているような気がする。そんな状況で働く女性が増えたのに、就業率だけを見て女性の社会進出が進んだ、輝いている女性が増えた、なんていうのはちょっと違うんじゃないかな。

 昨日テレビに出ていた60代のお二人は凛としていて、美しかった。きっと素敵な人生を歩んできたのだろう。そして今も歩み続けている。アグネス論争って一体何だったんだろう・・・。