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NHKスペシャル「OKINAWA ジャーニー・オブ・ソウル」を見て


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 2022年5月22日に放送されたNHKスペシャルは沖縄特集。沖縄出身のアーティストがそれぞれ沖縄への思いを語り、彼らの歌が流れる。語りは三浦大知さん。本土復帰50年のドキュメンタリーとエンタメが合わさったような番組だった。そのなかで私の心に残ったものについて感想を書く。

1. 「U.S.A.」はISSAさんの沖縄の記憶

 嘉手納基地の近くにコザという街がある。ここはDA PUMPのボーカル、ISSAさんが生まれ育った街。コザにはロック、ヒップホップ、沖縄民謡と音楽があふれている。また、基地の近くだったので、ラジオでアメリカ専門のチャンネルも聴けたという。2018年にリリースし大ヒットした「U.S.A.」という曲には、ISSAさんがコザで見たアメリカのイメージが織り込まれている。

 私にとってアメリカは海を越えなければ行けない場所にある遠い国。でも、沖縄の人々にとってアメリカはすぐそこにある国。この感覚の違いは大きい。それを意識して「U.S.A.」を聴くと歌詞が深いことに気づく。歌詞の一節「数十年でリレーションシップ だいぶ変化したようだ」って、日本とアメリカの関係性ではなく、沖縄と米軍基地の関係性だったのか。

2. 沖縄にロックあり

 戦後、日本と切り離されてアメリカの統治下に置かれた沖縄。島には次々と米軍の基地が作られた。コザは刹那的な快楽を求める兵士であふれていた。

 1970年にオキナワンロックが生まれる。ベトナム戦争のとき、嘉手納基地は出撃の拠点となっていた。戦地に赴く前の兵士と帰還した兵士。精神状態が極めて不安定な人たちのなかで演奏をしていた、とマリー・ウィズ・メデューサの喜屋武幸雄さんは話す。喜屋武さんの祖母はアメリカ人が運転した車にひかれて亡くなったが、沖縄に裁く権利はなかった。兵士による犯罪が頻発し、罪が問われないこともしばしば。沖縄の人々の怒りが積もり積もって、1970年の暮れに起こったコザ暴動。喜屋武さんもそれに参加したが、翌日は米兵の前で演奏をしていた。生きるために。

 そして月日は流れ、2000年代。コザのライブハウスからORANGE RANGEMONGOL800といったアーティストが誕生した。沖縄のロック魂は世代を超えて受け継がれている。

 聞いているだけで胸が苦しくなった。どんな思いで当時の沖縄の人々は暮らしていたのだろう。無秩序な社会で生きるつらさは、とても想像できない。基地問題というのはとてつもなく根が深い問題だ。

3.  沖縄の子供たちをスターに

 沖縄アクターズスクールから安室奈美恵さん、Folder、MAX、DA PUMP、SPEEDといった歌って踊れるアイドルが次々に誕生した。沖縄アクターズスクールを創設したマキノ正幸さんは、本土復帰直前に沖縄に移住し、沖縄をテーマにして勝たなきゃいけないと尽力。最先端のブラックミュージックを取り入れたアイドルたちは日本中の憧れの存在となった。インタビューでSPEEDの島袋寛子さんも登場。当時まだ小学生だった島袋さんは家を楽にするために芸能活動をしていたと話した。

 沖縄アクターズスクールという名前と、そこからたくさんのスターが生まれたことは記憶にあるが、創設者にこんなに強い思いがあるとは思っていなかった。私にとって沖縄は生まれたときから日本の南にある県で、ほかの都道府県と何ら違いを感じることはなかったが、それは私がただ無知なだけだった。創設者の夢は叶い、沖縄アクターズスクール出身のアーティストは日本の芸能史においても、沖縄の歴史においても素晴らしい功績を残している。

4. 心癒される沖縄ポップス

 石嶺聡子さん「花」、THE BOOM島唄」、夏川りみさん「涙そうそう」、ネーネーズ「黄金の花」、MONGOL800琉球愛歌」。今まで沖縄のアーティストはアメリカや本土を強く意識してきたが、沖縄の伝統音楽とのハーモニーを奏で始めた。

 ネーネーズをプロデュースした唄者の知名定夫さんは古いものを理解しないと新しいものは生まれないと言い、沖縄発音楽の原点は島唄だと語った。また、BEGINの比嘉栄昇さんはブルース発祥の地・メンフィスを訪れたときに地元の音楽を歌うことの大事さに気づき、名曲「島人ぬ宝」が生まれる。比嘉さんは 「どうぞよければ沖縄をふるさとと思ってください。」と話す。

 「島人ぬ宝」はイントロから歌詞からメロディーから何から何まで大好きな歌。曲を聴くだけで沖縄に瞬間移動しているのは私だけではないはず。今まで沖縄は大好きな場所だったけれど、比嘉さんの言葉をそのまま受け取って、私も沖縄をふるさとと思うことにしよう。

5. そして今、未来

 2022年、沖縄にはなおも在日アメリカ軍の専用施設の7割が集中している。一方、観光地として発展した沖縄は来訪者が年間1000万人を超えた(コロナ前)。三浦大知さんは伸びやかな歌声で「燦燦」を歌う。

 エネルギッシュなラップを歌うAwichさんは、今もアメリカ兵行きつけのクラブに飛び込んで音楽を磨き続けている。沖縄でたくましく生き抜いてきた彼女はアメリカ人の夫とは死別し、14歳の娘がいる。娘さんが小学生のとき、学校に米軍の機体の一部が落下したことがあった。その件について学校がアンケートを実施すると、多くのハーフの子たちは自分たちも悪いのかなと思ったという。

 この件を客観的に見れば、子供たちは誰も悪くないのは明白。それなのにアメリカ人にルーツを持っているというだけで、自分たちが悪いのかもしれないという思考を持っているハーフの子供たち。基地問題の闇の深さを物語っている。

 エンディングに流れてきたのはAwichさんの「TSUBASA」。強くて美しい歌だった。YouTubeで映像が見られるので、よかったら見てみてください。ブログの最後にリンクを貼りました。

 最後にひとこと。先日の池上彰さんの番組を見て沖縄の歴史は学んだつもりだったが、それは頭で理解したレベルだったとNHKスペシャルを見て気が付いた。もちろん、これを見ただけで沖縄の人々の気持ちが分かったとは思っていないけれど、日本に住む者の責任として、もっと沖縄を、基地問題を考えていかなければならないと感じた。

 この番組が一人でも多くの人が沖縄を考えるきっかけになりますように。

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