少し前の話になってしまうが、3月28日放送の「真相報道バンキシャ!」は、見ているこちらも緊張が走った。東京オリンピックの聖火ランナーの映像が流れたあとに、コメンテーターの宮本亞門さんが炎上覚悟でと前置きをしてから、「東京オリンピックは中止を表明すべきだ」と言ったのだ。
たぶん多くの日本人は心の中では「無観客といってもそもそも東京オリンピックは開催できるのだろうか」、「海外からたくさんのアスリートが日本にやってくることでコロナの流行は広がらないのだろうか」と思っているだろう。でも、テレビでは「オリンピック中止」は禁句らしい。もしかしたらみんな忖度して中止と言わないだけかもしれないが、「オリンピック中止」と言うワードはテレビで聞くことはまずない。
私たちは長いことマスコミの「新型コロナウィルス流行中」と「東京オリンピック盛り上げよう」という矛盾するふたつのニュースを同じ番組内で見させられてきた。「東京オリンピックを盛り上げよう」の「東京オリンピック」の部分は、昨年の秋ごろは「GO TO トラベル」だったり、「GO TO イート」だった。報道する側はそこに何も違和感を感じないのだろうかと心底不思議だったが、そうするしかないんだろうなと冷ややかに見ていた。
そんな状況のなかでの宮本亞門さんの発言。よくぞ言ってくれたと思う。私はオリンピックはコロナの感染が広がらないと確証があれば無観客で開催していいと考えている。逆にコロナが広がるリスクがあるのなら、アスリートには本当に申し訳ないけれど、中止が妥当だと思っている。そういう意味では、私は宮本亞門さんの考えとは100%同じではない。でも、「オリンピックやろうぜ」オンリーのテレビにそうではない意見を投じたことはとても意味があると思う。
この発言で炎上はしなかった。むしろ賛成派が多かった。この先、宮本亞門さんが今までと同じ頻度でテレビに出続けられるだろうか。もし出続けられるのなら、日本のテレビ業界は腐っていない。